株式会社エムプラット 代表インタビュー

株式会社エムプラットは2022年11月に誕生しました。
代表取締役の広瀬さんに、会社設立の思いとこれからの展望をインタビューしました。

―まず、どのような思いで会社を立ち上げたのかきかせてください

 医療業界は日本産業の中でも個の人の働きに依存している業界です。
第一次産業(農業漁業など)や第二次産業(工場など)を考えても、これだけひとりの人(患者)に対して多くの人が関わり、サービスが成立し、お金のやり取りが生じている業界も珍しいのではないでしょうか。
 しかしながら、医療業界の存在によって非常に多くの雇用が創出されこの国家が支えられているにもかかわらず、それを構成する一人ひとりは極めて顔が見えない状態で働いており、たとえ医師であっても代替可能な人材として扱われるような制度設計になっていることに、かねてから問題意識をもっていました。この国の医療を持続可能なものとするために、個に依存しすぎることなくサービス提供ができる今の制度は素晴らしい仕組みなのですが、その状況に甘んじているだけでは、個人が真に幸せに働ける業界となり得ないのではないか、と考えています。
 そこで、この国の産業の大部分を占める医療業界で働く人々が、今以上にやりがいを持って幸せを感じて働ける一助となるようなサービスを提供したいという思いでこの会社を立ち上げました。

 また、医療業界は他の産業と比べて、ある職場に対して供給される労働力が極めてその地域に限定されている、つまり、近場から人材を調達しているという状況にあります。 診療報酬制度においても都道府県単位で行われていることが多く、他県ではどうなっているか、国全体ではどのような方針なのか、隣の病院がどういう風にやっているのかが見えにくい状況で、働けば働くほど近視眼的になりやすい構造的な側面を持っているのを何とかしたいという思いもあります。

―では今後、業界の中でどんな存在になっていくのでしょうか?

 世の中、医療・介護の世界は多くの人間が勤務する構造、かつ、極めて多くのお金が動いている業界であるため、そこにビジネスチャンスを求める企業は多数存在します。
 しかし、個々の医療機関が必ずしも潤沢なお金を持っているわけではありませんし、そこで動いている人に依存した労働力ベースの事業であるため利益率が他の一般企業と比べて高くありません。また、業界の特殊性をわかっていないと業界内の人との共通言語で話をすることができないため、医療業界の外側の人からは「この業界は参入障壁が高い」と思われているのが現状です。 この状況によって、悪徳サービスを排除しているだけならまだしも、この業界をひっくり返す革新的なサービスが生まれたとしても世に知らしめる機会がかなり限定的となってしまうために医療業界内の改善が進まなかったり、労働環境の改善につながらなかったりすることがあります。これはとてももったいないことです。
 そこで、真に良いサービスや商品があれば医療業界につなぎ、紹介することがわたしたちができることなのではないか、と考えています。

―なるほど。医療業界を変えるためにつなぐ存在となるわけですね。

 当社は、元々多くの医療機関に勤務する人々が使ってくれているWEBサイト「しろぼんねっと」を運営してきました。
 本来は分厚い白本(診療報酬や施設基準、関連規定が記載されている書籍)を見たり、院内の誰かに訊かないと分からなかったことが、しろぼんねっとによってWEBでさくっと簡単に点数を調べることができ、業務上で困ったことを気軽に質問することができます。このようなサービスによって、医療機関内で働く人々の働き方や心の有りよう、ひいては人生の充実度を向上させることにも寄与できればと思っています。

―社名にこめた思いを教えてください

 医療業界やメディカル領域では、よく「M」が使われていますよね。Мから始まる単語はいろいろありますが、
Management(管理する)
Materialize(具体化する)
Motivate(動機付ける)
Manual(手引書)
Market(市場)
Marketing (市場活動)
Marvelous(驚くべき)
Medium(中間の、媒介となる)
Mindful(心を配って)
Mutual(共通の)
 …など、わたしたちのやりたいことや目指す世界につながる言葉が「M」から始まる単語に多く存在しています。ただ単にメディカルだから「M」ということではなく、前述したようなこの業界への思いをこめて「M」を使いました。

 また、プラットという言葉には「地平」とか「領土」などの意味があります。そのため、先ほど挙げたさまざまな「M」の「領土、領域、地平」を拡げ、その「M」をつなぐメディア・媒体の存在でることも含めて「エムプラット」という社名としました。

―思いのこもった社名なのですね!続いて、今後の展望についてきかせてください

 これまで、正しい診療報酬情報の提供、診療報酬領域で困ったときに相談できる場の提供をしろぼんねっとを中心に行ってきました。それに加え、ここ最近では、キャリアアップや知見向上を目的としたセミナーなども多くの方に提供できるようになってきています。そのような中で、まだできることがあるとすれば…。
 しろぼんねっとのQ&Aコーナーは、ユーザー同士が質問・回答し、共有知を使うことによって、より確からしい答えを皆で探って正解に近づいていくという形で従来から存在していました。一方で、この世界にはその領域の見識や分析力、知識、経験に優れた専門家の方々がたくさんいます。そこで、従来のユーザー同士のコミュニケーションの場はそのまま残しつつ、困ったときに専門家に気軽に相談できるようなサービスを提供していけたらと考えています。
 専門家の方々の立場から見ると、いままで培ってきた知見を医療業界に還元していきたいと考えている方々もいらっしゃるはずです。 しかし、前述の通り、この業界は参入ハードルが高く、新規参入が難しいと思われています。そのため、そのような方々が専門的な知見を今までよりも気軽に医療機関の方々に提供し、頼られる存在となっていけるような場(プラット)を創出していきたいと思っています。

―ありがとうございます。話は変わりますが、広瀬代表のお人柄を紹介するために、趣味や好きなことがあれば教えてください。

 もともと競馬が好きで競走馬を何頭か所有しているので、その馬たちを見に行くのが趣味です。競馬はギャンブルと思われるかもしれませんが、医療業界と似たところがあり、生産者、育成者、レースの開催者、騎手…すごく多くの人が携わっている産業でもあります。また、その個々人が頑張ったらよい結果が必ず出るわけではなく、ほとんどの場合、期待する結果が得られることがない世界です。頑張れば結果が出る、才能があるから結果が出るはず、というような不確実な世を不確実と思わない傲慢さを往々にして人は抱きがちですし、そうなると他人や自然や動物に対して、思いやりや愛情、慈しむこころを抱けない人間になってしまいがちです。そうならないためには、世の中にはうまくいかないこともあると人間は思い続ける必要があるのではないかと思うのです。
 そのことを最も教えてくれるのがわたしにとっては競馬なので、子供のころから、競馬は自分の人生の中で大事なものなのです。
 また、庭の野菜の世話も趣味なのですが、ここにも通じる部分があります。 たとえばこっちのパッションフルーツは元気だがこっちのミズレモンは元気がない…など、すべて同じように上手くはいかないのだと日々実感することが私にはとても大切だと思っています。

―なるほど!他にはありますか?

 あとは、色々な国や地域へ旅行することも好きです。
人間は、ある国家の都道府県、市区町村、集落、そして家庭のなかで生まれ育ち、さらに新しい家庭を作り…というサイクルで生きています。その環境の中で人は、自分がいま置かれている状態を偶然である、不確実な世の中でたまたまある幸せである、といまの幸せが所与のものであると思ってしまうことがよくあるのではないでしょうか。
 私は郊外の農村地帯で育ったこともあり、うっかりすると閉じた近視眼的な世界にこもってしまいがちだという自覚があります。自分の近くにあるものを大切にすることもとても重要です。しかし、自分が信じる正しさとは全く違う正しさがどこか遠くには存在していたり、自分にとっての誤りは隣の人にとっては正しいことだったりするということ、そしてそのような認識の違いはこの世の中にたくさんあるということを常に意識していないと、傲慢な視点になっていきがちだと考えています。
 それを自覚し謙虚になるために、いろんな世界を見に行くことは必要だと思い、一日二日の休みでも様々な地域を旅するようにしています。

 そう考えるとすべての趣味は根本的なところで同じ部分がありますね。
 この世は不確実で多様なもので、いろんな価値がサラダボウルの中の野菜のようにときに混ざり合いときに別個に存在するのがこの世の中です。 これらの趣味をとおして、多様な人に対するやさしさが手に入るのではないかと思っています。