地域医療を支える開業医の高齢化問題。M&Aアドバイザーが語る、「医業承継」が果たす役割

団塊世代が75歳以上となり、日本が超高齢化社会に突入する2025年を前に、問題となっている高齢経営者の後継者探し。医療機関においても、地域の医療を持続させていくため、医業承継が注目を集めています。

エムステージマネジメントソリューションズ(以下、MMS)では、医療機関の譲渡(売却)先・譲受(買収)先を探せる「医業承継サポート」を提供しています。医業承継を取り巻く現状について、M&Aアドバイザーの甲斐さんにお話を伺いました。

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ M&Aアドバイザー 甲斐さん
医療機関や会計事務所にて、医療機関の新規開設、医療法人化、医療機関向けファイナンス、戦略アドバイザリー、M&Aアドバイザリー、デューディリジェンス等を幅広く経験。

――早速ですが、甲斐さんのこれまでのご経歴を教えてください!

甲斐さん:20代は医療法人でクリニックの開設業務に携わりました。裁量が大きく、全国展開している大きな医療グループで、15を越える新規クリニックの立ち上げを主導しました。
その後は、金融機関で医療機関向けファイナンス、会計事務所でヘルスケアアドバイザリーやM&Aアドバイザリー、デューディリジェンス等の経験を積みました。

――一貫して医療・介護領域で活躍してこられたのですね。

甲斐さん: そうですね。実は友人の頼みで一時だけ、TV番組のプロデューサーとして活動していたことがあるのですが(笑)、それ以外は一貫して医療・介護の領域にいますね。医療、介護も今やニーズが細分化していますので、それらの領域の中で、様々な異なる経験や業務に取り組んできたと思っています。

中でも会計事務所で勤務していた時に、一般的には家を借りることがなかなか難しい、身寄りのないお年寄りを空室対策で一般の賃貸住宅で受け入れる、というビジネススキームを構築するお手伝いをしたことがあるのですが、そこで地域に根ざして生活をしていくための地域医療、いわば地域包括ケアの重要性を強く認識して、この課題に取りくんでいきたいなと思いました。

――そのことがMMSで医業承継に携わる、ひとつのきっかけになったのですね。

甲斐さん: はい。日本社会が抱える課題の多くに高齢化社会が関わっていて、医療課題も高齢化社会に起因していることが多いです。高齢化に起因する医療課題の解決に貢献したいですね。
開業医の高齢化は進んできていますし、地域にはその医院を頼りにしている患者さんがいます。患者さんのため、地域の医療提供体制の維持のために、医業承継が果たす役割は大きいと考えています。

私は地域医療を受ける患者視点を出発点としてこの課題を認識したこともあって、業界をボトムアップで見ています。患者さんのメリットは医療機関(医師)のメリットで、医療機関(医師)のメリットは医療業界のメリット、医療業界のメリットは医療の課題解決につながると信じています。

――医業承継というと大きな枠組みですが、その先に、医療を持続させることで地域社会で暮らす患者さん一人一人の生活を支え続けられる意義を、強く感じていらっしゃるのですね。

甲斐さん: 最終的に誰もが、患者になる時期が来ます。いつか自分も患者になる将来、日本が誇るこの医療提供体制がしっかり機能していてほしいと自分ごととして捉えることで、より課題への当事者意識を持つようにしています。
また課題は、解決すべきものであると同時に、ビジネスチャンスでもあります。医療課題は大きなシェアを占めますので、ビジネスとしてもチャレンジのしがいがあるなと感じています。

――医業承継は、医師の中でも一般的になってきているのでしょうか

甲斐さん: 世代に応じて、医師の中でも医業に対する感覚の変化が出てきているように思います。
若い医師の中には、早期に開業を志向する先生や、ベンチャー企業を立ち上げる等の別の側面から医療に貢献しようと考える先生も出てきています。医師としてどのように医療に貢献するか、もっと言えば医師としてどう生きるか、医師という資格をどう活かすかに、色々なオプションが出てきているのではないでしょうか。

そんな中で早期に開業を志す医師は、承継開業を志向する傾向も強いと感じます。診療所は緩やかに増加している一方で、長期的には患者数(人口)は減る方向にあります。そういった情報を医師も掴んでいるので、承継開業にメリットを見出しているように思います。
開業医の平均年齢が約60歳になっている実態を踏まえると、今後の医業承継はますます一般化していくでしょう。

――医師の生き方にも選択肢が増えてきているのですね。医業継承のメリットは何でしょうか

甲斐さん:譲渡側にとっては、診療所を手放すことは重い決断かと思いますが、医師の職業選択の自由が広がってきたことによって、ライフプランの選択が広がっています。
廃業をするにもお金はかかりますし、地域の患者さんをどうするかという悩みもあります。承継によって患者さんの行き先を確保したまま譲渡対価を受け取ることができれば、その後は勤務医に戻ることも、リタイアしてゆっくりと過ごすことも、異なるライフプランを描くこともできるようになります。

譲受側にとっては、患者さんが既にいる状態で、イニシャルコストを抑えて開業することができる医業承継のメリットは想像しやすいでしょう。
しかしながら、あえて注意点をお伝えするとすれば、承継開業が必ず100%成功するとは限りません。MMSも、承継開業後の職員採用の支援や経営のパートナーとなる税理士等専門家の紹介などの支援を行っていますが、そうした経営サポートも上手く活用しながらも、承継後は医師であると同時に「経営者になる」という覚悟が必要です。

医業承継のメリット(サービス資料より)

――実際にはどのようなご相談があるのでしょうか。

甲斐さん: 2つほど事例をご紹介します。
一つは、親から引き継いだクリニックを譲渡し、勤務医に戻りたいという先生のケースです。引き継いだ時点でクリニックは債務超過の状態であったため、債務超過を解消したのちに、また勤務医に戻りたいという思いをお持ちでした。譲受側は、医療事業拡大を希望する医師。それぞれ期日をもって急ぎたいという希望が一致し、2ヵ月程度で承継が完了しました。
もう一つは、医師の確保に苦労し経営が悪化した診療所を譲渡し、事業の選択と集中を行いたいという医療法人のケースです。事業拡大のために、都道府県をまたぐ広域展開を考えていた他県の医師が医療法人を継承。現在、複数の都道府県で医療機関を展開されています。

このように地域の医療が継続することで、譲渡する医師-譲り受ける医師-地域の患者さんがwin-win-winになる案件に携わると、医業承継のやりがいを特に感じます。

――医業承継を検討されている方へ向けて、よい承継を実現するためのポイントがあれば教えてください。

甲斐さん:売却を考えていらっしゃる先生に向けては、まずはこれまでの開業医としての地域への功績に最大限の尊敬と敬意を表したいと思います。「譲渡する」という決断は、重いものであるとは思いますが、あまり深く考えずに、あくまで一つの選択肢というイメージで早い段階から情報収集することをおすすめします。今や、事業承継は特別なことではありませんし、切羽詰まってからの決断だと、取れるオプションも限定されます。後継者探しにも時間を要します。継承しやすいタイミング、譲渡ニーズがあるタイミングを逃さないことを意識して頂きたいと考えていますので、ある程度好調な時期から考えておくことが大切です。

譲受を考えていらっしゃる先生に対しては、できるだけ幅広く承継先を探されることをお勧めします。こちらも一生ものという重い決断になりますが、色々な案件を見たり、相談したりする中で、自分がやりたい開業とは何かが定まっていくものだと思います。希望していない地域の案件も見てみたり、他の専門家に話を聞く中で、そんな選択肢もあるんだという気づきを得られることもあります。気軽に情報を集めてみる、というスタンスで、ご自身の希望をブラッシュアップしていくことをおすすめしたいです。

エムステージマネジメントソリューションズ 医業承継サポート:https://shoukei.mplat.jp/