11月の「過労死等防止啓発月間」を機に「名ばかり産業医」に終止符を

こんにちは!株式会社エムステージ 広報の関矢です。

今日から11月ですね。11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」です。ということで、今日は少し堅苦しいですが、働く人の健康と”産業保健”についてお話しします。

11月は「過労死等防止啓発月間」

厚生労働省では、11月1日から「過労死等防止啓発月間」を開始します。過労死等防止対策推進法に基づいたこの取り組みは毎年11月に実施。月間中は、国民への周知・啓発を目的に、全国48会場での「過労死等防止対策推進シンポジウム」の開催、労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問・過重労働が行われている事業場への重点監督・電話相談の受付といった活動を行う「過重労働解消キャンペーン」を実施します。

「過労死等防止啓発月間」を機に、各企業・労働者は改めて産業保健(※1)を見直す必要があると言えます。

※1産業保健:労働者の健康対策を目的とした活動。

産業保健の概況

厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によると、平成29年度の精神障害に関する労災請求件数は1,732件、そのうち自殺件数は221件となっており、ともに前年度比増となりました。

また、厚生労働省の研究班の調査によると、うつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発、再休職を取っていました。休職期間は1回目の平均107日に対し、2回目は平均157日と1.5倍長くなっています(出典:平成二十八年度労災疾病臨床研究事業費補助金「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」)。働く場でのメンタルヘルス対策は、年々必要性を増しています。

労災認定状況

メンタルヘルス対策を含めた健康に働く職場づくりに「産業医(※2)」の存在は欠かせません。2019年には労働安全衛生法の改正による産業医の機能強化も実施され、産業保健における産業医の役割はさらに重要性を増していきます。

しかし、企業の中には、産業医が職場巡視をしていない、高ストレス者や長時間労働者への面接指導を行っていないなど、産業医が実働していないことも多いのが現状です。さらには、法律の義務があるにも関わらず産業医の選任すらできていない企業も存在します。

法的義務のある事業所の産業医選任の有無

※2産業医:労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師。50人以上の労働者のいる事業所に選任が義務付けられている。

産業医の機能不全、なぜ起きる?

①効果を期待していない企業が法令遵守のためだけに選任する「名ばかり産業医」

産業医は原則、月1回の職場巡視(2017年6月より隔月1回以上でも可となった)が定められていますが、厚生労働省「平成28年労働衛生安全調査」によると、産業医を選任している事業所のうち、年に12回以上の職場巡視が行われている事業所は35%しかなく、とくに事業所規模が小さくなるほど訪問回数も少なくなる傾向にあります。50~100人未満の事業所では20.7%もの事業所が「訪問回数年0回」でした。法律を守るために産業医は選任しているけれども、その存在に期待をしていないために実働が伴っていないものと考えられます。

産業医の事業所への訪問回数

②産業医と企業への、労働者の不信感

産業医は労働者側から見ると「メンタル不調で休んだ人の復職を拒む人」「社員の心身の状態をチェックし、会社に告げ口する人」といったネガティブなイメージを持たれることも多く、産業医と話をしたがらない労働者も見受けられます。

実際に〝ブラック産業医〟と呼ばれる、企業に偏った判断で労働者に不当な判断をしてしまう医師も、一部では存在します。そうではない「産業医の中立性」を守った活動を行う医師を選任すること、そしてその中立性について労使双方で理解を広める必要があります。

③過去につくられた産業保健制度が現代にマッチしていない

そもそも産業医は工場で働く人の健康管理をする「工場医」に端を発しています。大企業、特に製造業で役割を果たすことを想定されたところからスタートしたため、大企業の「常勤」の専属産業医の活動を規定するものになっています。

しかし、産業医選任義務がある事業所数は約16万件で、そのうち96%以上は労働者500人未満の中小規模事業所です。産業医も全体の8割以上を「非常勤」の嘱託産業医が占めています。限られた時間で活動する嘱託産業医がどのように従業員の健康管理をし、過重労働やメンタルヘルス対策を行うのか国としての指針は現状なく、それぞれの事業所や産業医自身に任されている状態です。

産業保健の意義

はじめから「効果がない」と諦めて実働を求めない、正しく産業保健を行える自社の状況に見合った産業医を選任できていない、時間に限りのある産業医を上手に活用できていない。このような問題から産業医は機能不全を起こしています。

産業医の活用が定着していくと、従業員にとっては健康意識の向上、心身の健康度の向上、職場環境改善による業務効率の向上といった「効果」が感じられるようになります。同時に企業にとっては、職場改善による職場の活性化、労働生産性の向上、従業員満足度の向上といった「効果」につながります。

企業の産業保健は労働者個人の予防医療の観点からも、企業の生産性向上の観点からも重要な取り組みです。企業が自社の状況にあった産業医を選任し、意義ある産業保健を整備する必要があるでしょう。